「サピエンス全史」を読んで

久しぶりに読み応えのある本を読みました。
「サピエンス全史」(上巻、下巻)の著者はユヴァル・ノア・ハラリ、1976年生のイスラエル人歴史学者。サブタイトルは文明の構造と人間の幸福。

  
7万年前アフリカ大陸の一隅で捕食者を恐れほそぼそと暮らしていたサピエンス(人類)が食物連鎖の頂点に立ち、地球の支配者となった歴史とこれから人類はどこに行こうとしているのか、人類の幸福とは何なのかを問う壮大な物語で、単なる歴史書ではなく、またSFでもなく、考えさせられる1冊です。
目次は
第1部 認知革命
第1章 唯一生き延びた人類種
第2章 虚構が協力を可能にした
第3章 狩猟採集民の豊かな暮らし
第4章 史上最も危険な種
第2部 農業革命
第5章 農耕がもたらした繁栄と悲劇
第6章 神話による社会の拡大
第7章 書記体系の発明
第8章 想像上のヒエラルキーと差別
第3部 人類の統一
第9章 統一へ向かう世界
第10章 最強の征服者、貨幣
第11章 グローバル化を進める帝国のビジョン
第12章 宗教という超人間的秩序
第13章 歴史の必然と謎めいた選択
第4部 科学革命
第14章 無知の発見と近代科学の成立
第15章 科学と帝国の融合
第16章 拡大するパイという資本主義のマジック
第17章 産業の推進力
第18章 国家と市場経済がもたらした世界平和
第19章 文明は人間を幸福にしたのか
第20章 超ホモ・サピエンスの時代へ
あとがき――神になった動物

7万年前の認知革命によりホモ(賢い)サピンエスは新しい思考(想像力)と柔和な言語を持つことにより、客観的な現実世界だけでなく主観的な世界、それも大勢の人と目に見えないものを共有する共同主観的想像の世界に暮らすようになった。伝説、神話を生み出した。
約1万年前に始まった農業革命でかっての狩猟採集をしながら暮らしていた小集団から、農耕によって定住して大規模集団で暮らすことが可能となった。その動きをさらに速める原動力となったのが、貨幣と宗教と帝国とは説いている。
この中で貨幣は最も普遍的で効率的な相互信頼の制度で受け入れられている。
500年前に始まった科学革命でサピエンスは空前の力を獲得し始めた。なぜ科学革命が東洋には起きず西洋に発展したか。それはニュートンをはじめとする科学者、コロンブスを始めとする航海者、どちらも無知を前提にして、新世界を探検したとする無知の発見だというのは興味深い。
ホモ・サピエンスの歴史はプラス面だけではないと指摘する。多くの動植物種を絶滅に追い込んだ、家畜化された動物の幸福を奪っているという。70億以上の人口の食糧を支える大規模農業や畜産業は深刻だ。森林は多様な生態系を維持しているが、農場の拡大はそうした森林を破壊している。また工業化された畜産業は、数百億という家畜を大量生産品として扱っている。
乳牛は常に乳を出すわけではなく、定期的に妊娠させておく必要があり、誕生した子牛は強制的に母親から引き離され、歩き回ることもできない小さな柵の中に閉じ込められて、太らせて食用にされてしまうという親子の絆を無視した悲惨な現状を改めて認識した。さらに、ホモ・サピエンスという生物種としては大成功だとしても、その個々人の幸福が増したとは決して言えないというのである。
文明は人間を幸福にしたのか、と我々に問いかけている。
30年前にアルビントフラーが予測した「情報化革命」はすでに到来し、情報化社会 はその予想を超えるものになっている。
今後の情報化の進展に伴い、人工知能、脳とネットワークの接続、 自分の脳が他人とつながる世の中、などの到来を予測している。
さらに今までと全く違う進化、そう遠くない将来、ホモ・サピエンスはホモ・サピエンスを超えた生命体に取って代わられる完全な非有機体による支配という、サピエンスの終焉にまで言及している。
特に興味をひいたことは、これからの未来は進化の延長線上にあるのではなく、特異点(シンギュラリティ)という言葉でした。ホモサピエンスはまさにその手前に来ているということ。
遺伝子工学、人工知能(AI)、サイボークなどの領域で現在行われていることは、倫理的な懸念にも拘らずそれが病気治療などの実益が期待される限りとどめることはできない。それはいつか特異点(シンギュラリティ)を超えて未知の存在を生みだす可能性が高い。
その未知の世界が開けるのか、終焉に向かうのか、ひとりひとりが真剣に考えていかなければならないと思います。

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